ヤッピーの記録


3.ミラクル


バジルの死後、突然、
ベタ馴れ文鳥に変身。

自信に満ちた行動を
とり始める。

  ボクがいるから大丈夫




バジルの闘病中、ヤッピーにかまっているひまは全くといっていいほどなかった。
ヤッピーは感情をほとんど面に表さない子だった。
バジルと隣り合わせのカゴの中で、ずっと静かにしていた。






バジルを失って、私は激しいペットロスになった。涙のかわくことなど永遠にない気がした。

バジルが亡くなった日、お別れをさせてやろうとヤッピーをカゴから出した。出すのは、これを最後にするつもりで・・・。

ヤッピーは、ほとんどなつかず、言うことを聞かない文鳥だった。私はヤッピーを捕まえることができなかったので、放鳥後、カゴに戻る指令はいつもバジルが出していた。バジル亡き後は、可哀想だけれども、ヤッピーはカゴの鳥にするしかないと思ったのだ。


あんなにバジルを慕っていたのだから、何か別れの挨拶くらいあるだろうと思ったのだが・・・

なんと、ヤッピーはカゴから出るとバジルの亡骸には目もくれず、まっしぐらに私の肩に飛んできて、ひしと寄り添うではないか!

そして、泣いているわたしを慰めるようなしぐさをしたのだ。


「ボクガイルカラ、ダイジョウブダヨ」


というヤッピーの声が聞こえた気がした。



ただ、ただ、驚くばかりであった。

ヤッピーの気持ちが嬉しくて、嬉しくて、また泣いた。

だからといって悲しみが癒されたわけではないが、この日からヤッピーは私の心の支えになってくれた。






ヤッピーは豹変した。
ベタ馴れといってもいいほどに、いつも手の上にいるようになった。
昨日までのヤッピーと同じ鳥とはとても思えなかった。


何度もヤッピーに問うてみる。

「君はこの2年間、何を思っていたの?」
「イイジャン、ソンナコト」

「ごめんね、ヤッピー、君のこと何も分かってなかったね」
「イイヨ、ソンナコト」




この家にいるのはヤッピーと私だけ。

たった1羽、文鳥がいなくなっただけで、部屋がガランとして妙に広く感じられた。

静かな夜だ。

言葉を交わさなくても、ヤッピーと心がつながっている気がした。


この悲しくも幸せな日々は、新たな文鳥、チェリーを迎えるまでの2箇月余り続いた。




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